サイエンス思考(知識を理解に変える実践的方法論) | 一般社団法人 中部品質管理協会

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和田昭允という日本でゲノム解読をリードした物理学者の著書である。実践と成果は、やる人の考動力にかかるが、方法は、シンプルで判り易く解説されていて、腹に落ちる。あらゆる科学技術の基本として、お勧めする。

1.サイエンス思考の根幹は、①対象をよく観察し、②正確な情報(データ)を取りだし、③データ間の因果関係をつなぐ論理をみつけて、④対象を理解し、説明する最適の解決、解答(仮定、モデル)を出す、そして、⑤高度に技術化された社会をその仮定、モデルに基づいてスムーズに運転する、⑥将来を見通して予想、予測し、未来を開拓する、ことである。

2.サイエンスは、自然現象のデータだけでなく、人間心理や社会現象のデータを取り扱う。人間社会には、温かい心が必要であり、サイエンス思考は冷徹で無慈非なものではなく、知恵と知識と心の相互刺激が必要である。こころは、愛、慈悲、おもいやり、信頼の幸福へのプラスの願望で、マイナスのこころの欲であってはならない。サイエンス思考の実践で、知情意(知性と感情と意思)を尽くして、真(知-技術)、善(意-社会科学)、美(情-人文科学)を実現する努力をする。

3.ニュートンは、「リンゴが落ちる」と、「月は落ちない」の知識から、重力の矛盾に気付き、知恵で万有引力の法則を発見した。知識と知恵を結びつけるのは「ものをよく見る」観察と実験、「創る、まとめる」文章、グラフ、モデル化、計算で、「納得、理解する」ことで、判るまでこのサイクルを繰り返す。

4.サイエンスとは、森羅万象から秩序(原理・原則)を発見することであり、森羅万象を相手に、起(見つける)、承(知る)、転(創る)、結(解る)、そして、次の起のために、蓄える、伝えることの繰り返しで発展させる。具体的には、全体と要素とその間の相互作用を明らかにすることである。要素のつながりがシステム(全体)であり、機械システム、社会システム、生物システム等の例があり、相互作用を媒介するものが、エネルギー、力、物質、情報である。

5.知るための観察には、デカルトの法則が重要。すなわち、①明証の法則(明らかに真となるものを受け入れ、速断、先入観を避ける)、②分析の法則(単純で理解しやすい要素に分ける)、③総合の法則(やさしいものから複雑なものへと相互作用を組み立てる)、④枚挙の法則(全ての要素と相互作用を検討する)

6.情報処理能力=工夫+学習+記録。

7.独創は人に聞いたり、過去を調べても出てこない。黙って、眺めて、考える。毎日、寝ても覚めても同じことを考える、繰り返しが必要である。

最後に、技術を駆動するのは意思であり、執念である。科学技術立国の基盤は、「好奇心」にある。未知の世界の相関にピンとくる「感性」、概念に遡り原因究明する「探究心」が必要であり、その育成こそが日本が世界を生き抜く条件である、と激励する。                 (杉山 哲朗)